アメリカ会社員のビジネス英語と生活 blog

アメリカの会社、ビジネス英語とマインドフルネスや心身の健康について書いています。

薬事根拠書:Letter to File (LTF) またはRegulatory Strategy

会社によって呼び方が違うと思いますが、どこの会社の薬事部でも、どこの国の薬事部でも作られている文書だと思います。うちの会社ではRegulatory Strategyと呼ばれています。

 

  • 目的

RA Strategyをしっかり維持することは、申請業務と同程度に薬事の肝です!新製品の開発時や既存品への変更時に薬事申請が必要か否かの判断根拠を残すことが主たる目的です。それ以外でにも、何か会社として大きな薬事判断を下す場合、ノンコンプライアンスがあった時に当局報告が必要かどうかの判断や社内での修正計画の適切性判断の根拠など、ありとあらゆる薬事判断根拠を記録に残すための手段として使われます。

 

  • どんな時にその記録が使われるか(監査)

第一には社内や当局の監査。US FDAは事前に知らせずにいきなり監査にきます(unannounced audit)。EUのNotified Bodyは定期的に監査に来ます。MDSAP Auditも毎年ありますし、その他諸国での当局監査で設計開発元の薬事ドキュメントが求められることもあります。

突然要求されて、もうすっかり忘れてしまった5年以上前の判断に説明を求められるのです。なので何年後でも自信をもって説明できるように、そして誰が読んでもわかるように丁寧に記録しましょう!薬事のバイオレーションは、ささいなことに思えるようなことでも、その薬事部員個人と会社の生命にかかるものです。自分と会社を守るため、当局を納得させるための大変重要な文書です。

 

  • どんな時にその記録が使われるか(買収)

第二には自社が、あるいは自社の特定の製品分類が他社に委譲されるというときにも薬事ドキュメント(それと過去の申請書類も)が、買手の判断に大きな影響を持っています。買収やCo-promotion pertershipのプロジェクトでは必ず開発、品質管理、薬事等の審査を行います。Du Diligence Reviewと呼ばれたりします。

Quality上の問題は多かれ少なかれ必ず見つかるものです。ISO13485を取得した会社であっても会社によって品質/プロセス管理に求めるレベルが違いますので。それほど重大でなければ具体的な改善計画の合意をとることで許容可能と判断することもできますが、過去の薬事判断が間違っていて、申請すべきものをせずに今販売しているとか、設計変更を申請なしと判断した文書がないとなると、買収できないか、必要な薬事アクションを済ませた後で、ということになってしまいます。品質管理の改善という仕事を負うことはある程度可能でも、薬事ノンコンプライアンスは一見小さそうなことでも危険性が高いといえます。

品質管理上の問題が、例えば監査への回答がうまく進んでないとかFDA Form 483やWarming Letterへの対応状況に問題があるというレベルですとそれも買い手側にとってHigh Riskととられます(このレベルの難点を負うことは危険)。

(483 Form: Investgational Observation. オーディタ―のオブザーベーション)

 

  • どんな時にその記録が使われるか(裁判)

こんなことにはならないに越したことがありませんが、もし万一ある製品が裁判沙汰になった場合にも審査される文書です。

 

  • 何を記録するか

どの会社にも決まったフォームがあると思います。できるだけ同僚たちと同じようなスタイルで書きましょう。

日付、レビジョン、基本的薬事情報(クラスなど)、その判断根拠(ガイダンスなどの条項など)、変更内容の説明、申請要/不要の判断とその根拠(ガイダンスの引用等)、記載者とレビュー(マネジメント)のサイン。世界中に販売している場合、これが自国だけでなく他諸国の薬事判断も同様に記録します。MDSAP ISO13485がある場合はMDSAP諸国の記録はマスト!

 

 

以上、薬事の根拠ドキュメントについて簡単にまとめてみました。当局や裁判で説明を付けられるように気を引き締めて書きましょう。ご訪問ありがとうございました。